第1章:霧の夜、仮面の誘惑
2025/10/12 17:14:09|コメント:0件
霧が街を飲み込む夜、俺は「ルナ・ノワール」の重い木の扉を押し開けた。薄暗いバーは、ジャズのメロディとウイスキーの濃厚な香りで満たされている。いつものようにカウンターの端に陣取り、グラスを傾ける。だが今夜、俺の心を一瞬で奪い去る
女性が現れた。
黒いレースの仮面が、彼女の顔の上半分を繊細に隠している。仮面には、月光を反射する銀の糸で蛇と茨が絡み合う模様が刻まれ、まるで彼女の秘密を封じる呪文のようだ。触れると冷たく、まるで夜そのものを閉じ込めたような質感。露わになった唇は、深紅のルージュで彩られ、禁断の果実のように湿り気を帯び、俺の視線を絡め取る。深紅のシルクドレスは、彼女の曲線をなぞるように張り付き、動くたびに肌に沿って滑り、夜の波のように揺れる。彼女はカウンターの反対側に腰掛けた瞬間、細い指でワイングラスを愛撫するように撫で、その仕草は俺の心の奥をそっと掻き乱す誘いだった。彼女の唇が、微かに開き、微笑む。
「こんな夜に、一人で飲むなんて…もったいないわ。」
彼女の声は、甘く、霧のように柔らかく耳に絡みつく。まるで俺の魂の奥に忍び込み、熱を灯すように響く。俺はグラスを握る手に力を入れ、平静を装ったが、胸の鼓動が速まり、下腹部に甘いざわめきが広がるのを抑えきれなかった。
「君は…何者だ? その仮面は、何を隠してる?」
俺の声には、警戒と、抗えない渇望が滲んでいた。
彼女は唇を緩やかに曲げ、扇を広げて唇を半分隠した。扇の動きは、まるで仮面の蛇が這うように、彼女の息遣いを強調する。彼女は身をわずかに傾け、ジャスミンとバニラの香りが漂ってきた。その香りは、俺の理性を甘く溶かし、頭を霞ませ、肌を熱くする。
「私? ただ…退屈な夜を彩る相手を探しているだけ。あなた、危険なほど…熱く、面白そうね。」
彼女の言葉は、誘いであり、罠だった。彼女の指がテーブルの上で滑り、俺の手の近くで止まる。触れるか触れないかの距離。その一瞬、俺の皮膚は彼女の存在にざわめき、熱が下半身に走った。
「ゲームをしない?」
彼女の唇が、湿り気を帯びて囁くように動く。
「ルールは簡単。私の仮面の下を想像してみて。当たったら…私の秘密を、一つだけ教えてあげる。」
俺は彼女の微笑みに沈んだ。仮面の下に隠されたのは、どんな瞳か。どんな傷か。それとも、俺を飲み込み、溶かす深淵か。彼女のゲームに足を踏み入れることは、危険な誘惑に身を委ねることだ。だが、彼女の唇と香り、仮面の魔力に、俺の心—そして身体—はすでに囚われていた。
次章:彼女の名前と仮面の秘密が明らかに。彼女の微笑みが、俺をさらに深い闇へ誘う。
#仮面ごとに咲く花